初めて聴診器を買おうと思うけど、どんな聴診器を買ったらいいんだろうか悩んでいます。こんな私にぴったりの聴診器について教えて!
こんな疑問にお答えします。
- 聴診器選びのポイント4点
- おすすめの聴診器5選
- 聴診器購入時の注意点
本記事の信頼性
- 臨床18年目の現役理学療法士
- 認定理学療法士(呼吸)、3学会合同呼吸療法認定士、呼吸ケア指導士
- 集中治療室、救命救急病棟、一般病棟にて呼吸器疾患、重症疾患患者さんの治療に日々奮闘中
- 医療の最前線から本当に必要な聴診器について発信します
今回は、初めて聴診器を買おうとを考えているあなたに、間違いない聴診器について分かりやすく解説していきます。
聴診器選びのポイント4点
聴診器選びに重要なポイントを解説します。解説は飛ばしておすすめの聴診器を確認したい方は下記をクリックしてすっ飛ばしてください。
1、チェストピースの形状(最重要)
チェストピースの形状について最も重要な点は、
シングル構造のチェストピースかどうかです。
シングル構造とはベル面と膜面が一体となった形です(後で詳しく述べます)。
その理由は、
シングル構造のチェストピースは患者さんが仰臥位(仰向け)で寝ていても聴診がしやすいためです。
現場では寝ている患者さんの背中側を聴診する必要性が高いため、できるだけ薄く滑らかな形状のチェストピースが理想的です。
患者が仰向けに寝ている場合でも、薄い構造の聴診器であれば背中側の聴診を簡単に行えます。
医療の現場で働いていると、重症患者さんや寝たきりの患者さんを聴診することが多くあります。
寝たきりの患者においては、背側の呼吸音に変化がないかを確認することが重要です。特にS6およびS10と呼ばれる領域(肩甲骨と背骨の間の位置)での聴診が特に重要です。
高齢者に多い誤嚥性肺炎は右肺の背中側で発生しやすいとされており、この部位の聴診をするとこは重要ですね!
背中側を聴診するためには、チェストピースができるだけ薄く引っ掛かりが少ない構造が理想的なのです。
ベル面、膜面が両方存在する聴診器は、厚めの構造からマットレス(シーツ)に引っかかり、患者さんの背中にチェストピースが入りにくいわけです。
上記の理由から、聴診器を選ぶ際にはシングル構造の構造の聴診器を選ぶことをお勧めします。
2、イヤーチップの遮音性
次に重要となるのは遮音性に直接影響するイヤーチップです。
イヤーチップとは聴診器の耳に直接触れる部分です。
イヤーチップはゴム製のものを選ぶようにしましょう。
理由は、遮音性が高く、正確な聴診をしやすくなるためです。
聴診器は小さな音を拾います。周りの環境がうるさいと正確に音を判断できなくなります。
静かな環境で聴診ができれば良いのですが、ICUやリハビリテーション室では多くの音が溢れています。
正確に音を判断するためには遮音性が重要となります。
遮音性に影響する一つがイヤーチップの構造です。
1000円台の安い聴診器では、イヤーチップがプラスチック製になって おり、遮音性は低くなっています。
ゴム製のイヤーチップのものを選ぶと良いでしょう。
このブログでお勧めの聴診器を購入すれば問題ないです
このブログではプラスチック製のイヤーチップのものを紹介はしておりません。
3、チューブの形状
チューブはダブルチューブ(ツーインワンチューブ)を選びましょう。
理由は、イヤーチップと同様に遮音性が高く響音性に優れているため、正確な聴診がしやすくなるためです。
イヤーチップの項目でも説明しましたが、しっかりと小さな音をクリアに聞き取ることが大切です。
そのためにはイヤーチップのだけでなく、チューブも大切な要素の1つになります。
チューブにはシングルチューブとダブルチューブがあります。
シングルチューブ
- 皮脂に強い厚めの構造
- 軽量で扱いやすい
ダブルチューブ(ツーインワンチューブ)
- 2本のチューブを一体にし、音響特性に優れている
- 雑音をより遮断できる
- 微弱な音も聞き取りやすい
私はシングルタイプ、ダブルタイプを臨床で長らく両方使用しましたが、個人的にはダブルタイプが圧倒的に作りやすいと思いました。
4、価格
結論的には10,000円以上の聴診器を選ぶことを推奨します。
理由は、上記で説明した条件を満たさない聴診器であり、聴診器自体の性能から正確な聴診ができないためです。
聴診器は消耗品ではないため、よっぽど手荒く使用しない限り長らく使用できます。
長期使用を想定するとある程度の価格のものを購入しておいた方が良いと考えます。
これまで提示してきた条件を満たす聴診器を選ぶ場合、やはり10,000円以上の製品となります。
聴診器購入時の注意点
名前を刻印することを忘れない
新しく聴診器を購入する際には、名前の刻印サービスをご利用することをオススメします。
理由は、聴診器を買い替えることになる大きな一因である紛失を防ぐためです。
臨床の現場(大学病院や希望の大きい病院など)では、個人の聴診器が溢れており同じモデル、同じデザインの聴診器があることがしばしばです。自分の聴診器であるという目印や記名がなければ紛失のリスクとなります。
私は初めて買った聴診器は名前の刻印をしておらず、患者さんのベッドサイドに聴診器を忘れてそのまま紛失してしまいました。
おそらく病棟のどこかにあると思いますが、自分の聴診器であるという確信がないので結局新しい聴診器を購入することとなってしまいました。
名前の刻印にはさまざまなものが各販売店から提供されています。
有料から無料のところまであります(無料のところは刻印料含めて価格が高くなっていることが多い)。
紛失リスクを考えると名前の刻印サービスを利用することをおすすめします。
その他にネームタグを装着する方法もありますが、刻印をおすすめします。
理由は毎日の聴診器の消毒にネームタグは邪魔になりやすいからです。
聴診器に記名は必須で、記名の方法は名前の刻印が第一選択と考えたほうがいいでしょう。
あまり気にしなくてよい項目
血圧測定での聴診器使用
血圧測定を考慮して聴診器を選ぶ必要はありません。
現在は圧倒的に電子血圧計が普及しており、水銀血圧計でのアナログな血圧測定の頻度は圧倒的に減少しました。
とはいえ、アナログでの血圧測定がなくなったわけではありません。
電子血圧計には「聴診モード」があり、心房細動などの不整脈ではアナログで計測する場面があったり、
電子血圧計で正確に測れていないのではと疑問を感じる場面では聴診法にて確認することがしばしばあります。
実際私も10回に1回ぐらいの頻度で聴診法での血圧測定をしています
ですが、聴診器を血圧測定のためだけに使用する以外は、聴診法での血圧測定のために聴診器を選定する必要はありません。
聴診器の主な利用はあくまで胸部や腹部の聴診が中心です。
チェストピースがダブル構造(ベル面と膜面と分かれている)でも聴診法での血圧測定は可能だからです。
聴診器自体の重さ
聴診器選びで聴診器自体の重さがどうかを考える必要はあまりありません。
頻繁に持ち運びをする場合でも、聴診器自体の重さはさほど影響しません。
実際、ハイスペックモデルの聴診器とライトモデルの聴診器でも重さの違いは100g程度です。
できるだけ軽いモデルを探すよりは、チェストピースの構造や音がしっかりと聞き取れる構造かどうかを重要視すべきです。
個人的見解ですが、私は総合病院で勤務し多数の病棟を1日中駆け巡っていますが聴診器がもっと軽いといいなと思ったことは一度もありません。
おすすめの聴診器5選
第1位 リットマン® マスターカーディオロジー™ ステソスコープ
おすすめ度:
- 呼吸器領域、集中治療領域、救急領域でプロフェッショナルを目指す医療者
- 特に呼吸器疾患患者と関わることの多い医療者
- 値段はそこそこしても間違いない品を欲しい方
おすすめの聴診器第1位は、リットマン® マスターカーディオロジー™ ステソスコープです。
病棟や集中治療室でも活躍する高性能医療用聴診器
この聴診器は、病棟や雑音の多い集中治療室、リハビリテーション室でもしっかりと雑音を遮断し、確実な聴診が可能です。特に、呼吸器や集中治療、救急医療の分野でプロフェッショナルを目指す医療職におすすめです。
チェストピース
大きめのシングル構造でグリップしやすく、片面で低・高周波音を連続で聴診できるサスペンデッド・ダイアフラムタイプです。
イヤーチップ
ゴム製で耳にフィットし、外部の雑音をしっかりカットします。
チューブ
ツーインワンタイプのチューブで、音の伝達効率を高めています。
耐久性と価格
3万円台と高価な商品ですが、その分耐久性に優れており、5年以上毎日使用しても故障はありません。買い替えの必要がないほどしっかりとした作りで、コストパフォーマンスも優れています。
まとめ
この聴診器は、急性期医療の最前線で活躍する医療者や、呼吸器内科医に広く愛用されています。価格は高めですが、確実な聴診器を選びたい医療従事者には間違いなくおすすめです。集中医療の現場での使用頻度も高く、私自身も現役で愛用している信頼性の高い一品です。
私も現役で使用している聴診器です
この聴診器は急性期医療の最前線で使用している方が多いですね
第2位 ケンツメディコ ティーエスフォネット No .182
おすすめ度:
- 医療現場で働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師
- 訪問の現場で働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師
- 呼吸器領域、集中治療領域、救急領域でプロフェッショナルを目指す理学療法士、作業療法士、看護師等
おすすめの聴診器第2位はケンツメディコ ティーエスフォネット No.182です。
チェストピース
この聴診器はシングル構造を採用し、エクステンションダイアフラムを使うことで、呼吸音と心音を当て方の強弱で簡単に聞き分けることができます。精密な聴診が求められる場面で非常に効果的です。
イヤーチップ
ゴム製とプラスチック製のイヤーチップが付属しており、状況に応じて交換可能です。これにより、快適な装着感が確保されます。ゴム製のイヤーチップは非常に密封性が高く外の音をしっかり遮断します。
チューブ
ツーインワンタイプで、音の伝達ロスを最小限に抑え、クリアな音を提供します。
価格
2万円台後半と、聴診器の中では高価ですが、マスターカーディオロジーに比べては比較的お手頃です。コストパフォーマンスの良さが際立っています。
まとめ
この聴診器は十分な機能を持ちながら、現場での使用率が低いことが個人的な印象です。しかし、日本のメーカー、ケンツメディコを応援したい方にはおすすめです。リットマンに次ぐ第2位のシェアを持つため、品質に疑いはなく、確かな選択肢となるでしょう。
第3位 リットマン® クラシックIII™ ステソスコープ
おすすめ度:
- 医療現場で働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師
- 訪問の現場で働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師
- 比較的自立した患者さんと接することが多い医療職
- 呼吸器領域、集中治療領域、救急領域でプロフェッショナルを目指す理学療法士、作業療法士、看護師等
おすすめする聴診器第3位はリットマン® クラシックIII™ ステソスコープです。
- チェストピース
・ダブル構造(ベル面と膜めんが分かれた両面構造)のチェストピースを採用 - イヤーチップ
・ゴム製 - チューブ
・シングルタイプ - 価格
・13,000〜15,000円、使える聴診器では比較的お手頃な価格
この聴診器は価格、性能ともに最もスタンダードで汎用性の高い聴診器です。
しかし、最大の欠点はダブル構造のチェストピースとなっており、寝たきりの患者さんには使用しにくいという点です。
シングルタイプのチューブとなっていますが、呼吸音や心音の聴診は十分に可能なレベルです。
比較的自立した患者さんと接することが多いセラピストや看護師にはおすすめの聴診器となっています。
第4位 リットマン® カーディオロジーIV™ ステソスコープ
おすすめ度:
- 循環器疾患患者さんを対象とする医師、看護師、理学療法士など
- 医療現場で働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師
- 訪問の現場で働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師
おすすめの聴診器第4位はリットマン® カーディオロジーIV™ ステソスコープです。
- チェストピース
・ダブル構造のチェストピース
・リットマン® クラシックIII™ ステソスコープのチェストピースと比較しても厚みのある構造 - イヤーチップ
・ゴム製 - チューブ
・ツーインワンタイプ - 価格
・2万円台後半と高価な部類
両面にサスペンデッドダイアフラムが採用されており、小さい聴診面では小児の聴診に向いている構造となっています。また小さな聴診面のダイアフラムを外すことでベル面として使用することが可能となっています。
機能としてはダイアフラム、イヤーチップ、チューブともに申し分なしです。ですが、チェストピースが厚く寝ている患者さんの背中を聴診するには圧倒的に不利な構造となっています。急性期の現場で働く医療職には比較的不向きとなっています。
心音の異常をしっかりと聞き取る必要のある職種に向いた聴診器となっており、循環器疾患患者さんと接することの多い職種の方はこの聴診器を選ぶことをお勧めします。
第5位 リットマン® ライトウェイトII S.E. ステソスコープ
おすすめ度:
- 開業医等でゆるく働く看護師
おすすめの聴診器第5位はリットマン® ライトウェイトII S.E. ステソスコープです。
- チェストピース
・プラスチック製のダブル構造、卵型、大きい面いはサスペンデッドダイアフラムが採用 - イヤーチップ
・ゴム製 - チューブ
・シングル構造を採用 - 価格
・8,000〜9,000円台とお手軽な価格設定となっています。
1万円を切る価格設定ながら、基本構造がしっかりとしており正確な聴診は比較的可能な聴診器です。
ですが、チェストピースがプラスチック製となっており、廉価版というのが否めません。長年使用する予定がある人はやはり上記でご紹介した聴診器をお勧めしたいです。
今はなきおすすめ聴診器 リットマン™ マスタークラシックII™ ステソスコープ
私が性能、価格ともにバランスが良く、最もオススメしたい聴診器は廃盤となってしまいました。一万円台で購入でき、チェストピースはシングル構造、音もしっかりと聞き取れる製品でした。
現在でもこの聴診器を現場で使用している医療者は多数いらっしゃいます。
私が直接教わった呼吸器領域で有名な某大学教授はずっとこの聴診器を使用されていました。
リットマン® マスターカーディオロジー™ | ケンツメディコ ティーエスフォネット No .182 | リットマン® クラシックIII™ | リットマン® カーディオロジーIV™ | リットマン® ライトウェイトII S.E. | |
---|---|---|---|---|---|
チェストピース | シングル構造 片面で低・高周波音の聴診可能 | シングル構造 片面で低・高周波音の聴診可能 | ダブル構造 | ダブル構造 最も厚みあり | プラスチック製 ダブル構造 |
イヤーチップ | ゴム製 | ゴム製、プラスチック製に自身で変更可能 | ゴム製 | ゴム製 | ゴム製 |
チューブ | ツーインワン構造 | ツーインワン構造 | シングル構造 | ツーインワン構造 | シングル構造 |
価格(概算) | 30,000円台 | 20,000円後半 | 13,000〜15,000円 | 20,000円後半 | 8,000〜9,000円台 |
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