「リットマン以外の聴診器って、実際どうなんだろう?」
私自身、以前は「聴診器ならリットマンでいい」と思っていました。実際、これまで長く使ってきたのもリットマンです。
ただ、聴診器をレビューする側として、それでは少し偏っているなと思ったんです。そこで自分で購入したのが、ケンツメディコのティーエスフォネット No.132でした。
先に大事なことをお伝えしておきます。私がTS-FONETTE No.132を比較したのは、自分や家族への聴診です。患者さんに対して長期間、臨床のメイン機として使用したわけではありません。普段の臨床でメインに使っているのはリットマン マスターカーディオロジーです。

- 臨床18年の現役理学療法士
- 認定理学療法士(呼吸)、集中治療理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、呼吸ケア指導士
- 集中治療室、救命救急病棟、一般病棟にて呼吸器疾患、重症疾患患者さんの治療に日々奮闘中
- 医療の最前線から本当に必要な情報を発信します
その範囲での評価ですが、TS-FONETTEを実際に手にして最初に思ったのは、「これ、かなり完成度が高いな」でした。
結論から言うと、初めて聴診器を買う人には今でもリットマン クラシックIIIを勧めます。ただし、ある程度聴診器を使ってきた人なら、TS-FONETTE No.132はかなり上位の選択肢に入ります。私自身、Classic IIIとTS-FONETTEの2本を机に置かれて「今日どちらか1本を持っていくなら?」と聞かれたら、TS-FONETTEを選ぶかもしれません。
まず結論|Classic IIIとTS-FONETTEの違い

| 比較項目 | TS-FONETTE No.132 | Littmann Classic III |
|---|---|---|
| チェストピース | シングルサイド。独自のエクステンションダイアフラム | 成人用・小児用の両面サスペンデッド・ダイアフラム |
| 筆者が感じた取り回し | 片面式で扱いやすく、背側への差し込みやすさも好印象。ただし患者さんへの使用では未検証 | 扱いやすく万能。両面構造を必要に応じて使える |
| 聴こえ方の印象 | 自分・家族での比較では十分。Classic IIIと大きな差を感じない | 実機で確認した範囲では十分な聴診性能。No.132との音の比較は、自分・家族で確認した範囲での主観 |
| 初心者へのおすすめ | ○ | ◎ 第一候補 |
| 経験者へのおすすめ | ◎ 自分の好みが分かっている人に有力 | ◎ 王道で選びやすい |
表の「取り回し」「聴こえ方」は、メーカー公称値ではなく私自身の実機比較による主観です。TS-FONETTEは患者さんに長期間使用した評価ではなく、自分・家族で確認した範囲で記載しています。
Littmann Classic III
TS-FONETTE No.132
リットマンの他モデルも含めて比較したい方はこちら。
TS-FONETTEの片面式チェストピースで、マスタークラシックIIを思い出した
TS-FONETTE No.132を手に取ったときは、独特の膜面の形状が印象に残りました。実際に聴いてみると、以前使っていた聴診器を思い出す音の印象もありました。
No.132は片面式で、チェストピースの持ち替えが少なく済む点を好ましく感じています。膜面側には多少の厚みがありますが、手に取って形状を確かめた限りでは、Classic IIIと同様に背側へ差し込みやすそうです。ただし、No.132を患者さんの背側に差し込んで使用した経験はなく、臨床での優劣を断定するものではありません。
聴こえ方を確かめたときに思い出したのが、今は廃盤になっているリットマン マスタークラシックIIです。
マスタークラシックIIは、私が5年以上メインで使った聴診器です。薄いシングルサイドのチェストピースが本当に扱いやすく、急性期やICUで仰向けの患者さんの背側へ滑り込ませるときに非常に使いやすいモデルでした。
私は以前から「廃盤になっていなければ、おすすめ第1位だった」と書いています。それくらい好きな聴診器でした。
マスタークラシックIIは、片面式の使いやすさ、価格帯、リットマンへの信頼感のバランスが本当に良かったんです。廃盤になったのが今でも惜しいですね。
TS-FONETTE No.132からマスタークラシックIIを連想した最大の理由は、片面式チェストピースのシンプルな使い勝手です。マスタークラシックIIは、片面式の扱いやすさ、当時の価格帯、リットマンというブランドへの信頼感のバランスが非常によく、廃盤が今でも惜しいと感じています。No.132は使い勝手の方向性が近い一方、リットマンに対する私の個人的な信頼感まで同じという意味ではありません。No.132の品質が劣ると検証したわけでもありません。両機種の形状は同一ではなく、No.132の背側への差し込みやすさを患者さんで検証したわけでもありません。
私が5年以上使ったマスタークラシックIIの詳しいレビューはこちら。
リットマンとケンツメディコを実機で比べて感じた違い
1.チェストピース:TS-FONETTEはシングルサイドだが膜面側に厚みがある

私がTS-FONETTEを評価している最大の理由は、やはりチェストピースです。
ケンツメディコ公式では、TS-FONETTE No.132に「エクステンションダイアフラム」という独自構造が採用されています。メーカー説明では、軽く当てることで低音から高音までバランスよく聴取でき、押し当て方によって低音域の聴こえ方が変化する構造とされています。
実際に触ると、リットマンとは膜面の見た目から違います。少し立体的というか、膜面がしっかり胸郭へ接触するような印象があります。

シングルサイドの構造は私の好みに合います。膜面側には厚みがありますが、形状を手に取って確認した範囲では背側への差し込みやすさも好印象です。ただしNo.132を患者さんに使用した評価ではありません。チェストピースにはやや重さを感じますが、私には収納や取り回しで問題になるほどではありません。また、裏側の表面のざらつきは清拭のしやすさという点で少し気になりました。これは個人的な印象で、衛生上の問題が実証されたという意味ではありません。
2.聴こえ方:TS-FONETTEも十分。ただし私の基準ではMaster Cardiologyが上
自分や家族で比較した範囲では、TS-FONETTE No.132は心音・呼吸音ともに「聞きにくい」と感じることはありませんでした。
私の主観では、Classic IIIと比べても大きく見劣りする印象はありません。一方で、普段使っているMaster Cardiologyや、以前使っていたMaster Classic IIと比べると、聴こえ方についてはそちらを好みます。
ここは測定機器で客観的に周波数特性を比較した結果ではなく、あくまで私が実機を聴き比べた感覚です。
3.イヤーピース:選択肢の多さはケンツメディコの特徴
TS-FONETTEはイヤーピースの選択肢が多いのも特徴です。公式にも複数のイヤーピースが用意されていて、自分の耳に合わせて選択できます。

ただ、ここは「圧倒的な差」とまでは感じませんでした。リットマンの標準イヤーチップも密閉性はかなり高く、私は通常使用で困ったことがほとんどありません。
安価な聴診器の中には、イヤーピース周囲から外音が入ってきて、耳へ強く押し当てるようにしないと音を拾いにくいものがあります。TS-FONETTEでは、そのような感覚はありませんでした。付属する軟らかいシーリングチップの耳への密着感は良好で、耳へ無理に押しつけなくても十分な密閉感がありました。Classic IIIも密閉性は十分で、両者の差は大きくないと感じています。
Classic IIIとTS-FONETTE、私ならどちらを持っていくか
これは少し意外に思われるかもしれません。
Classic IIIとTS-FONETTE No.132の2本だけを置かれて、「今日一日どちらか1本だけ持っていって」と言われたら、今の私はTS-FONETTEを選ぶかもしれません。
理由は、私自身がシングルサイドのチェストピースを好むからです。
なお、Classic IIIは成人用・小児用の両面にサスペンデッド・ダイアフラムを備えていて、同じ面でも押し当てる力で低周波・高周波を切り替えられる構造です。心音と呼吸音を聴くたびに必ずチェストピースを裏返す必要があるわけではありません。
それでも私は、チェストピース自体がシングルサイドで、持ち替えを意識せずそのまま心音・呼吸音を確認できるシンプルさを好みます。呼吸音を中心に聴き、気になるときにそのまま心音を確認する自分の使い方には、この構造が合っています。
ただし、ここに今もマスタークラシックIIが現行品として置いてあるなら、私は迷わずマスタークラシックIIを持っていきます。
私の好みだけで並べるなら、Master Classic II > TS-FONETTE No.132 ≧ Classic IIIという感覚です。
それでも初心者にはClassic IIIを勧める
ここが、少しややこしいところです。
「自分ならTS-FONETTEを使うかもしれない」と言っておきながら、初めて聴診器を買う後輩にどちらを勧めるかと聞かれれば、私は今でもClassic IIIを勧めます。
理由は性能不足ではありません。TS-FONETTEは、正直、気になるところがほとんどないくらい完成度が高いと感じています。
ただ、私がこれまで働いてきた現場ではリットマンを使っている人を圧倒的によく見かけました。周囲と同じメーカーを使う安心感もありますし、Classic III自体の性能にも大きな不満はありません。
初めての1本で、あえて少し玄人寄りの選択をする必要はない。私はそう考えています。
Classic IIIを詳しく確認したい方はこちら。

TS-FONETTEをおすすめしたい人
- すでに聴診器を使った経験があり、次の1本を探している人
- 呼吸器領域などで聴診する機会が多い人
- シングルサイドのチェストピースを好む人
- Master Cardiologyほどの価格帯・方向性までは求めない人
- リットマン以外の高品質な選択肢を試したい人
- 日本メーカーの医療機器を選びたい人
たとえば、呼吸療法認定士や呼吸ケア指導士、認定・専門資格などを取得して、これから呼吸領域をもう少し深く見ていきたい人。そういう人にはTS-FONETTEはかなり面白い選択肢だと思います。
「みんなが使っているもの」ではなく、自分の仕事や使い方を理解した上で道具を選びたい。そんな段階に来た人には、かなり刺さる聴診器です。
ケンツメディコを実際に買った理由
私がTS-FONETTEを買う前は、正直「聴診器はリットマン以外に選択肢がほとんどない」と思っていました。
でも、その状態で聴診器をレビューしても、結局は自分が知っているブランドの中だけで評価することになります。それでは偏るなと思い、リットマン以外のメーカーも調べました。
そこで目に入ったのがケンツメディコでした。国内で聴診器を製造しているメーカーで、公式サイトでは部品の鍛造から切削・成形・組立・梱包まで、ほぼすべての工程を国内工場で行っていると説明されています。
形状を見ても面白い。価格だけが高いモデルではなく、実用的なところで勝負しているように見えました。それなら一度自分で買って確認しようと思ったのが購入のきっかけです。
私は日本企業にも頑張ってほしいと思っています。それだけで医療機器を選ぶべきだとは思いませんが、実際に使ってみて性能に不満がほとんどなかったからこそ、「この完成度なら、もっと知られてもいいのに」と感じました。
価格差があれば、私の選択は変わる
聴こえ方と耳への密閉感は、自分・家族で試した範囲では両者ほぼ互角でした。片面式の扱いやすさから、同じ価格なら私はNo.132を僅差で選びます。しかし、どちらも十分に聴診できるため、価格差がつけば話は変わります。
| No.132とClassic IIIの価格差 | 私なら選ぶ機種 | 理由 |
|---|---|---|
| No.132が3,000円安い | No.132 | 片面式の好みと価格の両方で選びやすい |
| 同じ価格 | 僅差でNo.132 | マスタークラシックIIを思い出す片面式の使い勝手 |
| No.132が3,000円高い | Classic III | 十分な聴診性能があり、差額を払う必要性を感じない |
※上の金額は購入判断を説明するための仮定で、現在の実売価格ではありません。購入時には両機種の実際の価格、販売店、保証条件を確認してください。これは私個人の判断基準であり、両機種の客観的な性能差を示すものではありません。
結論:最初の1本はClassic III、分かって選ぶならTS-FONETTEはかなり良い
初めて聴診器を買うなら、私はClassic IIIを勧めます。性能、知名度、周囲での使われ方を含めて、最も失敗しにくい選択肢だからです。
一方で、TS-FONETTE No.132の性能に大きな弱点があるかと聞かれれば、私はほとんど感じませんでした。
シングルサイドの構造、十分な密閉感、心音・呼吸音ともに不足を感じにくい聴こえ方。私が非常に高く評価していたMaster Classic IIを思い出した聴診器でもあります。
初心者にはClassic III。でも、自分の聴診スタイルが分かってきた人ならTS-FONETTEを選ぶ理由は十分にある。
これが、実際に両方を手にして比べた私の結論です。
TS-FONETTE No.132単体の詳しい実機レビューはこちら。

現在おすすめしている聴診器をまとめて比較したい方はこちら。
よくある質問
ケンツメディコとリットマン、初心者にはどちらがおすすめですか?
私なら最初の1本はLittmann Classic IIIを勧めます。周囲で使っている人が多く、性能と扱いやすさのバランスもよく、失敗しにくいからです。一方、すでに聴診器を使った経験があり、シングルサイドの構造や独自の聴こえ方を好む人ならTS-FONETTE No.132は有力です。
TS-FONETTE No.132は患者さんへの臨床使用で比較していますか?
この記事では、患者さんに長期間使用した比較ではありません。購入当初から将来的に読者などへプレゼントする可能性を考え、臨床での使用を極力控えていました。聴こえ方や密閉感は、自分と家族に実際に当てて確認しています。
TS-FONETTEとMaster Classic IIは似ていますか?
Master Classic IIを思い出した最大の理由は、片面式チェストピースのシンプルな使い勝手です。片面構造・当時の価格帯・リットマンへの信頼感がそろったMaster Classic IIの廃盤を、今でも惜しく感じています。ただし両機種の形状や音響性能が同じという意味ではなく、No.132の背側への差し込みやすさを患者さんで検証したわけでもありません。
痩せ型の人でも使いやすいですか?
ここは体型との相性があると考えています。肋骨が浮き出るほど痩せた体型では、胸郭の凹凸によって膜面全体を密着させにくい可能性があります。これは患者さんで検証した結論ではなく、自分・家族で実機を当てて感じた形状上の注意点です。

